毎年春に行われる、BCA (British Crystallographic Association, 英国結晶学会) から生還してきました。
今年はWarwick大が主催、初日の火蓋は今や恒例となったYCG (Young Crystallographers' Group, 青年の部) の発表により、切って落とされました。博士課程の学生や卒業して間もないポスドクがお互いの研究を発表しました。そんな中、自分は口頭とポスターにての発表、特に口頭の発表はなんと初日の2番目でした。さらに自分はYCGの委員ですので、2日目朝一番のセッションを司会してきました。発表はともかく、司会を務めるのがあんなにプレッシャーがかかるものとは・・・(汗
YCGのセッションが初日と二日目の午前中に行なわれた後は、年配の方々が次々と到着し、普通通りの学会が4日目の正午まで行われました。最新の研究成果や、いろいろ興味深い発表が聞けるだけで満足ですが、とくに今年は2011年にノーベル賞を受賞したダニエル・シェヒトマン(Daniel Shechtman)本人による準結晶への発見にまつわる話に、誰もが耳を傾けていました。
個人的に面白かったのは、今まで別の分野として扱われてきた、タンパク質と小規模化合物の結晶学を、これからはお互いに歩み寄って行くべき、それには何が必要かというディスカッションでした。背景としては、タンパク質の結晶構造の信頼度が徐々に進歩してきた一方で、今までタンパク質とは比べ物にならないほどの高品質にて得られた小規模化合物の結晶構造も、対象である化合物の規模が徐々に大きくなるにつれて、今まで化学系の結晶学者たちが直面したことがない問題(比較的低い解像度や、高めの結晶内における溶液の割合)に向き合わなければならなくなってきたことがあります。ディスカッションはタンパク質と小規模化合物、それぞれの結晶学の大御所が、聴衆からの質問に答えながら意見を交わすといった風に行われました。
そのディスカッションの中から印象に残った話を一つ。タンパク質の結晶構造は解像度が2Å以上で得られればラッキーといった風潮がありますが、小規模化合物の結晶学者は1.3Å以下のデータは捨ててしまうそうな。(ナ、ナンダッテー タンパク質を扱っている人間としては信じられない話です。
学会は終わり、自分の卒業も近づくなか、自分のYCGの委員としての期間もあと一年を残すのみとなりました。YCGが創立されたのは比較的最近(2000年代半ばだったかな)ですが、この若いが活発なコミュニティーを残った期間中にさらに盛り上げて行けば良いなと思います。学会中、ボスやほかのラボの大御所たちの間で学生たちがおとなしくかしこまっているよりも、フレンドリーでフランクな雰囲気のなか、自身と同じようなレベルの学生たちと話し合えるのは、将来的にコラボレーションを芽生えさせる機会を与えられる点で、長期的にとても良いと思います。