Monday, August 30, 2010

「デュアルブート環境にてWindowsを再インストールせよ!」の巻

突然お亡くなりになりました。Windowsが。大学の自分のコンピューターで。確かに最近はLinuxを使うことが多かったのですが、だからと言って愛想をつかさなくても。

とにかくWindowsを再インストールしないと、気分的に良くないのでデュアルブート環境での再インストール方を書き留めておきます。環境はWindows Vista Business 32bitの後にUbuntu 10.04 LTSをインストールしたもの。起動時のOS選択はUbuntuのGRUBに任せてます。

デュアルブート時に初心者が陥りがちなポイントをまとめると、
  1. Windowsを再インストール:Linuxが確実に立ち上がらなくなります。
  2. Linuxを削除:Windowsが確実に立ち上がらなくなります。
の2点となります。

今回はLinuxとのデュアルブートを維持しつつ、Windowsを再インストール時なので、1です。

  • MBRのバックアップ:KnoppixをCDに焼き、起動します。USBにメモリースティックを刺し、アクセサリのRoot Shellで、
    dd if=/dev/hda1 of=media/sda1/MBRbackup bs=512count=1
    (OSが入ったディスクがhda1,メモリースティックがsda1の場合。出力されるファイルはMBRbackup。)
  • Windowsを元のパーディションに再インストール。
  • 再起動時にはGRUBのOS選択画面が現れず、直接Windowsが起動するはず。
  • 再度Knoppixを立ち上げ、Root Shellにてコマンド、
    dd of=/dev/hda1 if=/media/sda1/MBRbackup bs=512count=1
    (ofとifが参照先と書き込み先を決定します。間違えると致命的ですので慎重に・・・)
  • 再起動時には元のように、GRUBによるOSの選択画面が現れるはずです。

ついでに2の対策も。この場合、デュアルブートをやめ、コンピューターをWindows専用に戻す場合です。Linuxのパーディションの内容、もしくはそれ自体を削除すると、起動時にMBRから転送されるGRUBがなくなります。対処法は、

  • Windows インストールの手順と同じく、ディスクを入れ、それを立ち上げます。
  • Windowsのバージョンによって異なるので一概には言えませんが、修復すると言った旨のオプションを辿ると、コマンド・プロンプトが選べます。
  • Vistaの場合:/FixMbr
    XPの場合:FIXMBR
  • 何らかのオプションを付け加えなければいけないかも知れませんが、そのあたりはよく覚えてません。 
このFIXMBRコマンドは、Windows2000以降でしか使えません。FIXMBRとFIXBOOTがWindows NTで使えたら便利だろうに・・・・・というのも、とあることから大学でクロマトグラフィー操作用のNT機が立ち上がらなくなったからです。問題を解決するため、自ら買ってでた仕事とはいえ、所謂「身から出た錆」というヤツです。これは次回のネタということで。

Saturday, August 28, 2010

技術と進歩


LHC lawsuit dismissed a second time

CERNが地球を破壊するのを阻止するための訴訟とやらが未だ起こっているようです。確かに全ての物事にリスクはつきものですが、それは現実的なものでしょうか。このような訴訟を起こす人々は、日々身の回りに起こっている他のリスクの方がよほど危険だと理解しているのでしょうか。そういえばCERN完成間近だったころ、やはり「CERNがブラックホールを生み出し世界は破滅する!」などとほざいた末、人が自殺したなんて事件もありましたね。

進歩は失敗の積み重ねです。失敗を恐れ、行動を起こさなければ何も進歩はありません。しかし、最近の世論は技術開発に対し、過剰に批判的ではないかと思います。例えばもんじゅがあります。安定して稼働出来ればエネルギー不足の解決に寄与できるものとされていますが、これはまだ未熟な技術です。にもかかわらず、厳しい批判を受けています。車や飛行機は今や我々の生活に欠かせないものですが、それらの開発はスムーズに進んだのでしょうか?開発者たちは様々な罵倒を浴びながら技術の切磋琢磨に励んだことでしょう。ライト兄弟の伝記はあまりにも有名です。昔から人々はこうであったのかと考えると、進歩の無さに失望を感じます。

今の状況が、何も問題なく、恒久的に安定して維持できるのであれば、そのような態度も理解できます。しかし、現実は違うと思います。温暖化、森林伐採、人口増加、気候変動、食糧難、エネルギー不足など、解決すべき問題は山積みです。このような状況だからこそありとあらゆる方面に投資をすべきと思うのですがどうでしょう。特にこれらの問題はそれぞれ全てが文明が壊滅しうる程の問題であり、なお手を打つのは早ければ早いほど効果的であるということを踏まえた上でです。

実際人類が絶滅するのはあと何年後のことでしょう?僕にはイースター島での出来事がグローバルなスケールで起こっているように感じます。人々は己を足の先から貪り始め、気がついたときには頭しか残っていないという状況になるのを恐れずにはいられません。ジャレド・ダイアモンドの文明崩壊」 - 数年前に読みましたが、未だにその強烈なインパクトが印象に残っています。なぜならばそれは我々が実際にたどってきた道のりを正確に記しているからです。

Thursday, August 5, 2010

愉快な論文

未来ではシリコン型のチップは廃れ、代わりに大量生産されるネズミの脳がコンピューターのCPUとなる・・・なんてSFちっくな妄言を聞いたことがありますが、最近ネイチャーに乗った論文がある意味それにとても近いのではと思います。 

Predicting protein structures with a multiplayer online game

構造生物学:タンパク質構造予測をクラウドソーシング

 この論文では人間の直感がタンパク質の折り畳みを極めて正確に予測できるということが分かったと、著者らは論じています。この文章だけで眼の色を変え、身を乗り出して記事のリンクを踏んだ方 - 貴方は俺の同士です。それ以外の方も、難しいことではないので是非続きを。

数え切れない程の種類のタンパク質は、私たちの体を形作り、また色々な働きを担っています。それらのタンパク質は、ほぼ例外なく高度な3次元的な構造をしており、それは「折り畳み」と表現されます。タンパク質は20種類のアミノ酸からできた鎖であり、それら一つ一つは何種類もの配置が可能です。結果、比較的小さなタンパク質でも1000次元ほどの配置の組み合わせが可能であり、それがタンパク質の構造を予測する際の、難しさでもあります。しかし、コンピューターの性能やアルゴリズムの進歩により、近年ではタンパク質の折り畳みを総当り的にシミュレーションし、正しい構造を予測することが妥当だと思われるようになってきました。


今回、この論文では二通りのタンパク質の構造予測の方法を比較したものです。それらは
  • "Rosetta@home"というインターネット上のコンピューターの空き時間を有効活用し、総当り的にタンパク質の折り畳みのパターンを予測するプロジェクトと、
  • ユーザーにゲーム形式でタンパク質の構造を与え、プレイヤーは直感を駆使して正確なタンパク質の折り畳みを当てる、"Foldit"プロジェクトです。
結果、色々な側面において、人間の直感が総当り的な計算方法よりも優れているという結果が出ました。特に、人間はコンピューターのアルゴリズムが苦手とする、「まず一旦、今の構造を崩し、大局的にみて将来的に有望そうな配置を選び、それを素に結果的によりより構造を作り上げていく」という作業が非常に得意だそうです。コンピューターならこの場合、最初の構造を一旦崩す段階で、スコア落ちるのを機に、その候補を排除してしまうのです。これに対し僕は「人間は高度な先見性をもっている」という、普段聞けば「当たり前じゃん、バカじゃねーの」というような事ながら、コンピューターという無機質な物と比較したときに際立つ、素晴らしさを感じます。


一方で、コンピューターが人間より優れている場面とは、パズルのお題となる素の構造が、まったくヒントのない、まっすぐなアミノ酸の鎖として出された時だそうです。この場合、考えうる候補が天文学的な数字となるので、今までの研究の結果によりチューニングされたアルゴリズムと圧倒的な計算力を備えたコンピューターの方が、素人の人間よりも有利なのではなかろうかと思います。(Folditプロジェクトは科学と無縁な一般的な人々をプレイヤーとすることを目的の一つとしています。)


この論文より、いくつかの将来的な課題が考えられると思います。
  • 人間の思考パターンをどのようにアルゴリズムに取り込めるのか。
  • 人間・コンピューターの混合リソースをいかにに有効に活用できるのか。
  • 今までのプロジェクトを発展させ、さらに効率的で正確なタンパク質の構造予測法の確立。
自分にとっての注目は3番目です。自分は結晶学という、タンパク質の構造を予測ではなく、実験により明示的に調べるという分野に携わっています。「予測は方法がなんであれ、卓上の計算に過ぎない。実際の構造を調べるには明示的(explicit)な方法でなければいけない」というのが我々の主な主張です。しかし、一つまた一つ、とタンパク質の構造が実験により解析されるにつれ、それらを組み入れた、タンパク質構造予測がどんどん正確になってきているのも、また事実です。さらに、近年は全く新しいタンパク質の折りたたみパターンは発見されていません。既に、主な折りたたみの種類は発見されていると考えるのが妥当でしょう。ならば、アミノ酸の鎖の順番がわかれば構造が予測できる、なので構造生物学者は全員即刻クビにすべきだ、という考えも生まれるかも知れません。


しかし僕は結晶学をはじめとするNMRなどの構造生物学が廃れることはない、と確信しています。タンパク質の構造を知る際のモチベーションとなるのは、大まかな構造のみではなく、細かなディテールが左右するその仕組みを知ることでもあります。また、その働きを始める前と終えた後の違いを検証し、正確なタンパク質のメカニズムを知るということは、その大まかな形(Backbone,背骨と表現されます)を知るだけではわかりません。結晶学者たちは今しばらく、納税者から見放されることはなかろうかと思います。


この論文は何故か久しぶりにワクワクとさせてくれました。今は遠い、カラフルな図鑑を見て「科学は素晴らしい」と 思わせた日々を彷彿とさせます。もちろん今でも僕はそう信じて疑いませんが。自分は、"Foldit"の存在を前から知っていたので、その結果がネイチャーという最高の晴れ舞台にでたことが愉快なのかも知れません。

Wednesday, August 4, 2010

答えは

悩みを解決するのを手伝ってくれるサービスがあるというので、試してみました。結果、答えは出ませんでした。
ナゼナゼくん