Wednesday, November 10, 2010

メディアの温度差

最早しばらく前の事になりますが、今年も日本人がノーベル賞を受賞されたそうです。普段より大した愛国心を持ち合わせている自分ではありませんが、やはり日本人が受賞するのは喜ばしいものです。

さて、自分は前よりIPS細胞を作り出す方法を樹立した京都大学の山中伸弥教授がいつかはノーベル賞を受賞 するものだろうと確信しています。ノーベル賞とはその性格上主に、今や科学の化石と言われる技術に受賞されるものです。確かに、技術や発見が世の中に与えた成果や影響などを見極めるのに時間がかかるのは致し方ないかと思われます。しかし自分はいずれIPS細胞が医学に大きな影響を与え、そしてそれに対しノーベル賞が与えられることを信じております。

こう考えているのは自分だけではないはずです。IPS細胞の記事は頻繁に新聞や週刊誌などに掲載されていますし、テレビやニュースサイトで取り上げられることも、化学分野にしては比較的多いかと思います。IPSがメディアに頻繁に取り上げられる事自体は、科学成果を納税者に伝えるという点で間違ってはいないと思います。しかしここで僕がいつも気になるのが、異なる技術に対するメディアの取り上げ方、そしてそれによって生まれる消費者の偏見です。(繰り返し書いておきますが、僕はIPS技術に対し、肯定派です)

遺伝子組換え技術はヨーロッパ諸国や日本において、特に強い反発(偏見)に遭っていると思います。組み換え作物は生産、流通、消費、これら全てのプロセスにおいて安全性をチェックされているので、安全性には全く問題ないと思われるのですが、何故か受け入れられません。ここで僕がポイントとして上げたいのが、メディアにチヤホヤされ、将来の医療に期待を寄せられているIPS細胞も、それをつくる過程において、いわゆる遺伝子組換えに相当する作業が含まれているということです。

ES細胞を実験に使うことにおける倫理的な問題を回避できるとされるIPS細胞ですが、その生産方法を大まかに説明すれば、既に分化した細胞にヤマナカファクターと呼ばれる3つの遺伝子を導入することによって、細胞を分化する前の多能性な段階まで若返らせ、それを使い体の組織を作り、医療や実験に使おうというものです。

遺伝子を導入すること自体への安全性を懸念するのであれば、その対象を食料とするのか、もしくは医療用に身体へ適用するかでは、求められる安全性のレベルが極端に違うのではなかろうかと思うのは僕だけでしょうか。確かに、最近ではIPS細胞を作る過程において、ヤマナカファクターをDNAとしてではなく、RNAとして導入することによって、3つの遺伝子が細胞のゲノムに取り込まれることなく、細胞を若返らせるテクニックなども見受けられますが、もし仮に同様にRNAを使ったゲノムに一切手を付けずに穀物や野菜を改良する技術があれば、人々はそれを受け入れるでしょうか。答えはノーでしょう。

このような自問自答を繰り返すたびに失望するのですが、これに対する僕からの提案は残念ながら少ない。 サイエンスカフェなどの取り組みもありますが、このような取り組みに進んで参加するのは消費者のうちの一握りでしょう。やはり重要なのは人々がそれぞれ、「なぜ?」という質問できるようになれることでしょう。自分もまたその点において、未熟であります。このようなブログを書く資格もないのかも知れません。

人々への科学の理解を促す活動をしている著者にサイモン・シンと言う方がいます。(僕が尊敬する先輩です!)その人の著書に"Trick or Treated" (邦題:代替医療のトリック)があります。科学的に治療法を検証するとは何か、や、古くから伝わる代替医療は公平に検証された場合効果はあるのか?などについて書かれています。驚くほどたくさんの詐欺が大手をふるってまかり通っていうことに驚愕するでしょう。おすすめの本です。

追記
  • 組み換え作物が安全性の可否については論じているとキリがないので略しました。
  • RNAをつかった、導入する遺伝子がゲノム(≒染色体)に取り込まれないテクニックは、その改変が子孫に伝わらないので、遺伝子組換えに相当しないのでは?というツッコミを予想します。これは理論上はそうなのですが、現在の法律上ではそのような一時的な遺伝子の導入による改変(RNAi)なども「genetic modification」に属されると、学部時代に講義で聞きました。
  • サイモン・シンの活動やBritish Chiropractic Associationによる彼への訴訟という一連の出来事についてはいつかまたのネタにします。英国に言論の自由あれ!

Sunday, September 26, 2010

思い出し笑い

近年は世界中で日本食ブームが起こっております。ロンドンも例外ではなく、大通りには日本食レストランを見かけるようになってまいりました。そんなある日、私はバスに乗って移動しておりました。一旦停止したバスの中より、ふと外を見るとショーウィンドウに一際大きく「でじる」と漢字で書いてあるレストランがあるではありませんか。
「ははっ、見ろよ、"でじる"なんて書いてあんよ、これだから欧米は!」なんて思った自分でありましたが、バスが徐に動き出した瞬間、ハッとしました。入り口の垂れ幕にローマ字で「DASHI」と書いてあったのです。

これは実話に忠実に基づいております。まさかとは思いますが、上の例の漢字がイメージ出来ない方は、私と一緒に大使館へ赴き、パスポートを返上しなければいけないのかも知れません。

Thursday, September 23, 2010

「急遽埋めてくれ!」 → そんなムチャな! → 結果は?

昨日から今日にかけて"Plastid Preview 2010"という小規模のカンファレンスへ行ってきました。毎年ホストの大学が変わり、Plastid(色素体)に関係する研究をしているグループが集まり発表会をするのです。今年のホストはインペリアルなので同じ地元です。このカンファレンスの趣向とは成長過程の博士課程の学生や、キャリアを始めたばかりのポスドクに発表・交流の機会を与えるというもので、今年は100人ほど参加しました。ひょんな事で自分も口頭の発表をすることになったのですが・・・

「プレゼンをしないかね」とスーパバイザーから聞かれたのが2週間前でした。自分は臆病なのですが、経験は積まねば積もらないもんだ、と思い「是非やりますっ!」と答えておきましたが、オーガナイザーより「定員いっぱいなのでやっぱいいわ」と連絡があったのがその週の金曜。しかし!つまらない時間ををもてあました週末を終え大学に赴いた月曜日 - 「発表スロットに空きが出たので急遽埋めてくれ!」との連絡がオーガナイザーより。

とりあえずプレゼンを取り繕いましたよ、ええ。最初からプレゼンをする、 と決まっていたのなら週末を有効に過ごせたのにー、今更プレゼンを用意しろと言ったって今週の実験のスケジュールはもう決めてあるのにー、などと不満はありましたが、なんとか自分が納得できるもができました。

今週の初め、一緒にプレゼンをする同僚たちとの練習会に参加した際、監督していた教授は「全員非常に良い」と評価してくれましたが、カンファレンスの結果がほぼその教授の言葉通りになろうとは。

結果は5つある賞の中、ポスドク部門、博士課程部門の1位と2つあるRunner-up(2・3位タイ)の中1つの計3つをクイーン・メアリーがかっさらって行きました。(クイーン・メアリーからの発表は4人でした)自分は大げさな表現は好きではありませんが、これは快挙ですね。嬉しいです。ケンブリッジやインペリ、UCLやマンチェも参加したミーティングの中で、これは好印象を与えたことでしょう。実際、ミーティングの合間にウチの教授の元へ「お宅へ行きたいです」と冗談なのか本気なのかわからないコメントをしに来た学生もいたそうです。

クイーン・メアリーは決して大きな規模の大学ではありません。予算や設備、教官と学生の割合も決して優れているわけではないので研究に携わる教官や博士課程は苦戦を強いられますが、なんとか一騎当千の活躍を見せようと皆思っており、自分もまたそうです。プレゼンでそれが認められたのは嬉しいですね。

自分のプレゼンです。是非見てください!感想や質問、建設的な批判などを首を長くして待っています。

20100923_talk

自分の結果?そんなもの知りたければ下をハイライトしてみてください。
結局自分はRunner-up(2・3タイ)賞でした。自分のプレゼンがもっと早くに確定していればもっと効果的に準備できたのに、というのがいい訳です(笑)。景品は、カンファレンスのスポンサーInvitrogen/Life Technologiesより進呈された£25分の図書券でした。Invitrogen、アイラヴユー。次回実験用のキットを仕入れるときに値引いてくれれば、なお好きですが。

Monday, September 13, 2010

Microsoftの太っ腹

Microsoftの太っ腹具合に驚愕しました。国際学生証のHPを見ていると、Microsoft DreamSparkというモノの宣伝が。どうやら国際学生証を持たずとも、Microsoftのサイトを通じて自分の大学のアカウントで認証すると大量の開発用のソフトや、VirtualPC、挙句にはWindows Server 2008まで無料で使えるという。更にはXNA Studioまであるではありませんか。その気になればXbox用のゲームも作れますぞ。

素晴らしい、素晴らしすぎる。あぁ、サーバー用OSが無料で手に入ることだし、一台新規にPCを組んでしまおうか・・・



ソフト開発関係つながりで、もう一つ。最近発売された気になる新製品がこちら。

PS3でも採用されている高性能チップを搭載するPC用拡張ボード。以前はチップを一個搭載する製品がありましたが、こちらはなんと4個搭載。更にはSDKも公開されています。これで鬼の様な処理能力を自由に使えるというわけです。自分がこちらの道に長けていれば、この製品を使い、以前紹介したRosetta@homeの様な莫大な処理能力が必要な構造生物学の問題に生かしたいですね。

Wednesday, September 1, 2010

問題解決

今週はコンピューターに泣かされ続ける週です。

事の発端はクロマトグラフィー操作用のコンピューターのHDDの空きスペースが少なくなってきたことから。WindowsNT機でC:2GB, D:16GBとパーディションが分けられており、Cドライブしか使われておらず、また、Dドライブを使おうにもクロマトグラフィー操作用のソフトが、インストールされているCドライブしか参照できないというステキ仕様ということに起因します。

とりあえず、誰かが何か行動を起こさない限り、事態は解決しません。解決するのは比較的簡単そうだったので、自分が役を買って出ました。
  • MBRを含めたHDDのバックアップ。
  • 使われていないDを縮小し、Cドライブのパーディションを拡張。
  • ね、簡単でしょう?
となるはずでした。が、何故かうまくいきませんでした。さらにオリジナルのバックアップを書き戻すも、何故か起動しません。おそらく原因は使用したバックアップソフトがNTに対応していないことかも。しかし事をやらかしてしまってからでは原因などはどうでも良いのです。

結果的にはシステムをほぼ修復できました。最初にとったバックアップもありましたし、Windowsや必要なソフト、ドライバーの類も全て準備し、元通りに。どちらからと言えば今まで以上に使いやすくなったと思います。HDDのスペースを有効活用し、WindowsをNTから2000にアップグレードでき、手持ちのメモリーを加えることで体感速度もアップです。

これ以外にも、上記の過程で色々ぐだぐだとあったのですが省略します。 より高い丘に登るには一旦谷に降りなければいけないと、身に染みて分かりました。とりあえず当初の目的を達成できたことを喜びます。

Monday, August 30, 2010

「デュアルブート環境にてWindowsを再インストールせよ!」の巻

突然お亡くなりになりました。Windowsが。大学の自分のコンピューターで。確かに最近はLinuxを使うことが多かったのですが、だからと言って愛想をつかさなくても。

とにかくWindowsを再インストールしないと、気分的に良くないのでデュアルブート環境での再インストール方を書き留めておきます。環境はWindows Vista Business 32bitの後にUbuntu 10.04 LTSをインストールしたもの。起動時のOS選択はUbuntuのGRUBに任せてます。

デュアルブート時に初心者が陥りがちなポイントをまとめると、
  1. Windowsを再インストール:Linuxが確実に立ち上がらなくなります。
  2. Linuxを削除:Windowsが確実に立ち上がらなくなります。
の2点となります。

今回はLinuxとのデュアルブートを維持しつつ、Windowsを再インストール時なので、1です。

  • MBRのバックアップ:KnoppixをCDに焼き、起動します。USBにメモリースティックを刺し、アクセサリのRoot Shellで、
    dd if=/dev/hda1 of=media/sda1/MBRbackup bs=512count=1
    (OSが入ったディスクがhda1,メモリースティックがsda1の場合。出力されるファイルはMBRbackup。)
  • Windowsを元のパーディションに再インストール。
  • 再起動時にはGRUBのOS選択画面が現れず、直接Windowsが起動するはず。
  • 再度Knoppixを立ち上げ、Root Shellにてコマンド、
    dd of=/dev/hda1 if=/media/sda1/MBRbackup bs=512count=1
    (ofとifが参照先と書き込み先を決定します。間違えると致命的ですので慎重に・・・)
  • 再起動時には元のように、GRUBによるOSの選択画面が現れるはずです。

ついでに2の対策も。この場合、デュアルブートをやめ、コンピューターをWindows専用に戻す場合です。Linuxのパーディションの内容、もしくはそれ自体を削除すると、起動時にMBRから転送されるGRUBがなくなります。対処法は、

  • Windows インストールの手順と同じく、ディスクを入れ、それを立ち上げます。
  • Windowsのバージョンによって異なるので一概には言えませんが、修復すると言った旨のオプションを辿ると、コマンド・プロンプトが選べます。
  • Vistaの場合:/FixMbr
    XPの場合:FIXMBR
  • 何らかのオプションを付け加えなければいけないかも知れませんが、そのあたりはよく覚えてません。 
このFIXMBRコマンドは、Windows2000以降でしか使えません。FIXMBRとFIXBOOTがWindows NTで使えたら便利だろうに・・・・・というのも、とあることから大学でクロマトグラフィー操作用のNT機が立ち上がらなくなったからです。問題を解決するため、自ら買ってでた仕事とはいえ、所謂「身から出た錆」というヤツです。これは次回のネタということで。

Saturday, August 28, 2010

技術と進歩


LHC lawsuit dismissed a second time

CERNが地球を破壊するのを阻止するための訴訟とやらが未だ起こっているようです。確かに全ての物事にリスクはつきものですが、それは現実的なものでしょうか。このような訴訟を起こす人々は、日々身の回りに起こっている他のリスクの方がよほど危険だと理解しているのでしょうか。そういえばCERN完成間近だったころ、やはり「CERNがブラックホールを生み出し世界は破滅する!」などとほざいた末、人が自殺したなんて事件もありましたね。

進歩は失敗の積み重ねです。失敗を恐れ、行動を起こさなければ何も進歩はありません。しかし、最近の世論は技術開発に対し、過剰に批判的ではないかと思います。例えばもんじゅがあります。安定して稼働出来ればエネルギー不足の解決に寄与できるものとされていますが、これはまだ未熟な技術です。にもかかわらず、厳しい批判を受けています。車や飛行機は今や我々の生活に欠かせないものですが、それらの開発はスムーズに進んだのでしょうか?開発者たちは様々な罵倒を浴びながら技術の切磋琢磨に励んだことでしょう。ライト兄弟の伝記はあまりにも有名です。昔から人々はこうであったのかと考えると、進歩の無さに失望を感じます。

今の状況が、何も問題なく、恒久的に安定して維持できるのであれば、そのような態度も理解できます。しかし、現実は違うと思います。温暖化、森林伐採、人口増加、気候変動、食糧難、エネルギー不足など、解決すべき問題は山積みです。このような状況だからこそありとあらゆる方面に投資をすべきと思うのですがどうでしょう。特にこれらの問題はそれぞれ全てが文明が壊滅しうる程の問題であり、なお手を打つのは早ければ早いほど効果的であるということを踏まえた上でです。

実際人類が絶滅するのはあと何年後のことでしょう?僕にはイースター島での出来事がグローバルなスケールで起こっているように感じます。人々は己を足の先から貪り始め、気がついたときには頭しか残っていないという状況になるのを恐れずにはいられません。ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」 - 数年前に読みましたが、未だにその強烈なインパクトが印象に残っています。なぜならばそれは我々が実際にたどってきた道のりを正確に記しているからです。